皆さんは、恩田陸さんの『ピクニックの準備』という作品はご存じですか？
もしかしたら似たような名前の『夜のピクニック』はご存じかもしれません。
この2つの作品は、世界観が一緒で、『夜のピクニック』の前日譚として『ピクニックの準備』が書かれています。
今回は、『ピクニックの準備』にスポットを当てて、お話を進めていこうと思います。
また、この作品を執筆された恩田陸さんについてもご紹介していこうと思います。
目次
【ピクニックの準備・恩田陸の作品】登場人物とあらすじをご紹介
まずは、『ピクニックの準備』の登場人物とあらすじについてまとめていこうと思います。
登場人物
登場人物は3人
・甲田貴子：同級生の西脇融と異母兄弟。母はシングルマザー
・西脇融：テニス部。甲田貴子と異母兄弟。
・私：貴子と融の関係を知る人物
あらすじ
『夜のピクニック』の話の軸となる2人と私で進められていくお話です。
明日行われる高校生活最後の歩行祭への思いがそれぞれ語られています。
「歩行祭」とは、貴子たちが通う学校の伝統行事で、24時間かけて80㎞を歩くというものです。
かなりあっさりとした話なので、恩田陸ファン向けのお話なのかもしれません。
ネタバレも少ないので、先に『ピクニックの準備』を読んでから『夜のピクニック』を読んでも大丈夫だと思います。
『ピクニックの準備』と『夜のピクニック』の関係とは？
続いては、この2作品がどのような関係にあるのかまとめていこうと思います。
『ピクニックの準備』と『夜のピクニック』は正式な前日譚ではない
タイトルにあるように、正式な前日譚ではありません。
原型と言う方があっていると思います。
原型なので、設定や名前などが、わざと微妙に違っているのです。
インタビューで明かされた恩田陸さんの見解
恩田陸さんはこのように述べています。
「微妙に『夜のピクニック』とは違うところもあるので、あくまで短編として読んでもらえば。
この長編の構想の原型はこんな短編だったのか、という興味を感じてもらえたら嬉しいです」
このことから、2つの作品は繋がっているようで、繋がっていない作品だと思っていいと思います。
『ピクニックの準備』が収録されている『図書室の海』とは？
『図書館の海』は10篇の作品からなる短編集です。
《登場人物》
メインの登場人物は5人です。
・関根夏：ヒロイン。硬式テニス部に所属する高校3年生。
・志田啓一：夏のテニス部の先輩。卒業生。
・桜庭克哉：夏のテニス部の後輩。高校2年生
・美保：克哉の彼女
・浅井光：志田の幼馴染。高校2年生。
《簡単なあらすじ》
学園祭が終わり3年間の高校生活も残りわずか。
そんな生活に少し物足りなさを感じていた夏は、ある遊びを思いつきました。
それは、密かに憧れていた、テニス部の先輩志田啓一の読んでいた本を探していく遊びです。
図書室で先輩の借りた本をたどっていく夏は、卒業生から代々受け継がれている不思議な儀式について知ることになりました。
ここまでが、ネタバレにならない程度のあらすじ紹介です。
『ピクニックの準備』の作者恩田陸とはどんな人？
最後に、『ピクニックの準備』や『夜のピクニック』を書いた、恩田陸さんについて、代表作や受賞作品などを軸にまとめていこうと思います。
恩田陸の代表作
代表作をジャンル別に何作品がご紹介します。
《ミステリー・推理系》
恩田陸さんと言えば、ミステリーですよね。
どこか幻想的だったり、過去の名作へのオマージュを取り入れていたりするのが、恩田ワールドです。
その中でも、恩田陸ファンが選んだミステリー小説を3つ挙げておきますので、気になるタイトルがありましたら、ぜひ読んでみてください。
・麦の海に沈む果実
・黒と茶の幻想
・象と耳鳴り
《ファンタジー系》
恩田陸さんはファンタジー作品も多く書かれています。
異世界ものもあれば、現実と隣り合わせのファンタジーどちらも得意とされています。
「このような世界があったら楽しいな」という作者の趣向がダイレクトに表れるジャンルでもあるので、恩田ワールド全開です。
こちらも、ファンの方が選んだ作品を3つ程挙げておきます。
・光の帝国 常野物語
・ライオンハート
・ネクロポリス
《青春・爽やか系》
恩田陸さん、初心者に優しいのがこのジャンルです。
爽やかな青春小説は万人受けするものが揃っています。
直木賞や本屋大賞の受賞作も、この青春・爽やか系ジャンルから出ていますので、ぜひ１度読んでみてください。
・蜂蜜と遠雷
・チョコレートコスモス
・夜のピクニック
《ホラー系》
恩田陸さんは決してホラー小説作家ではありません。
ですが、人間の内側の恐怖を書き出せるのは、そうそういないと思われます。
気味悪さや恐怖を煽る作品を多く書いています。
こちらも、ファンの方が選んだホラー作品を3つ程、ご紹介します。
・禁じられた学園
・月の裏側
・MAZE
受賞された作品
恩田陸さんの作品はたくさんの賞を受賞されています。
その中でも、有名な賞を取った作品を紹介していこうと思います。
2004年 第2回 キノベス２００４ 『夜のピクニック』 第1位
2005年 第26回 吉川英治文学新人賞 『夜のピクニック』 受賞
2005年 第2回 本屋大賞 『夜のピクニック』 第1位
2006年 第59回 日本推理作家協会賞 『ユージニア』 受賞
2007年 第20回 山本周五郎賞 『中庭の出来事』 受賞
2017年 第156回 直木三十五賞 『蜂蜜と遠雷』 受賞
2017年 第14回 本屋大賞 『蜂蜜と遠雷』 第1位
どれも有名な賞を受賞していますし、本屋大賞には2作品が第1位を取っています。
恩田陸さんの作品を初めて読むなら、受賞作品から選んでみても良いと思いますよ。
作風
「ノスタルジアの魔術師」と呼ばれる恩田陸さんは、コンスタントに新刊を刊行する人気作家です。
先ほども説明した通り、ミステリー・ファンタジー・青春小説・ホラー、SFなど幅広いジャンルを書くことができます。
また、相当な読書家でもあるので、過去の作品へのオマージュとなっている作品も多数あります。
しかし、魅力的なイマジネーションを提示する反面、物語が尻すぼみになったり、伏線を回収しきれなかったりして、結末があらぬ方向で着地するということも多々あります。
しっかりまとまっている作品は「恩田陸にしては珍しくオチがついている」と言われてしまうほどらしいです。
まとめ
・『ピクニックの準備』は『夜のピクニック』と世界感が似ているものの、正式な前日譚ではなく、原型と言うのが正しいです。
・恩田陸さんは、様々なジャンルの作品が書ける作家ではありますが、結末に迷いが出る場合もある事でも有名だそうです。
本屋大賞は比較的、読みやすい本が選ばれていますので、恩田陸さんの作品を読んでみたいという方は、『夜のピクニック』や『蜂蜜と遠雷』などから、読み始めると恩田陸ワールドに浸れると思います
ちなみに、『ピクニックの準備』と『夜のピクニック』はネタバレ要素が少ないので、どちらから読んでも大丈夫だと言われています。
少しでも興味を持ってもらえたら、恩田陸さんの作品を読んでみてくださいね。