楽しいはずの花火大会やお祭、しかし一歩間違えると大惨事を招く恐れもあります。
皆さんは2013年8月15日に起きた京都府福知山市花火大会露店爆発事故を覚えておりますでしょうか。
数年前に起きたこの事件、もうその詳細を忘れてしまった方も多いでしょう。
今回はなぜこのような惨事が起きたか、また今後私達が忘れてはいけないその真実をご紹介します。
目次
京都府福知山市花火大会露店爆発事故の詳細
2013年8月15日、毎年多くの方が訪れる京都の中でも盛大な花火大会のお祭り会場で、爆発は起こりました。
死者3名、負傷者59名という多大な犠牲者が出た悲しい事故。
ここではどうしてこのような事故が起きたか説明していきます。
楽しいはずの花火大会で何が起きたのか|概要
2013年8月15日19時30分ごろ、花火大会会場の由良川河川敷でベビーカステラを販売する屋台の店主が、発電機にガソリンを給油しようと、ガソリン携行缶の蓋を開けたところ、大量のガソリンが噴出して爆発が起きました。
爆発時の現場は丁度花火大会の花火が上がり始めたばかりで、多くの観客で混雑していたさなかの事故でした。
花火の見物に来ていた59名が重軽傷、3名が全身火傷により死亡。
また、露店3棟が延焼という、花火大会史上歴史的惨事になりました。
爆発に驚き、悲鳴を上げて逃げ惑う人々、実際に巻き込まれて深い傷を負った被害者、助けを呼ぶ人。
その場にいた人が突然恐怖のどん底に落とされ、パニック状態になりました。
どうして悲劇が起こったのか|原因
直接的な事故の原因は、京都府警の調べにより、ベビーカステラ店の男性店主が、ガソリン携行缶から発電機に給油する際、気化し空気中に噴出したガソリンに、鉄板の火が引火して爆発が起き、多くの人や店が巻き込まれた可能性が高いことが分かりまりました。
ただこれ以外に、少なくとも事故の発生に繋がるいくつかの要因があったのです。
- 要因①ガソリンは、発電機の熱風が出ていたすぐ後ろに、長時間置かれ高温になっていた。
- 要因②店主がガソリンを缶から給油する際、エア調整ネジを緩めることなくいきなり蓋を開けたため、携行缶の開口部からガソリンが一気に噴き出して周囲に飛散した。
- 要因③現場は同じくガソリンや火を使っている屋台が多く、ベビーカステラ店のガソリン爆発によりガソリンが広範囲にわたって飛び散り、引火し被害が拡大した。
事故後行われた対応
爆発が起こった直後、すぐに避難指示や、近隣住民により被害者の手当てなどが行われました。
その中で到着した救急隊員は、現場の混雑のため、負傷者を市の用意した大型バスで、一旦福知山市民病院に送り、重傷者は救急車ピストン搬送を行うなどし、救護活動にあたりました。
病院では負傷者を福知山市民病院より、転院等調整を行い、発生日から翌日にかけ約20人が10近い病院に転院しました。
ここまでの被害が出たこの事件ですが、勿論被害補償が大きな問題となりました。
なぜなら火元のベビーカステラの露店が所属していた「京都宮津神農協同組合」が加入していた保険は全部で1千万円しか補償能力がなかったのです。
花火実行委員の加入している保険は10億円でしたが、あくまで花火事故が起こった時のため、今回の事故には適応されませんでした。
しかしこの中で実行委員会は、被害者への補償について、被害者のいる病院を訪問し治療費や休業補償などの示談に向けて話し合いを始めました。
ただ被害者が、多くの病院に搬送されたため、被害者が誰なのか、被害者の連絡先はどこか、など示談に向けては困難が多くありました。
京都の福知山市花火大会露店爆発事故のその後
ではこの大惨事が起きた後、何が変わったのでしょうか。
こちらでは、事故後の再発防止に何が必要か、また被害者の方のその後を説明していきます。
再発防止のためにすべき事|ガソリンの危険性を知ろう
今回の事故の最大の原因はベビーカステラの店主の過失というのは言うのは勿論ですが、私たちに身近な存在のガソリンを軽視しすぎていた点もあるのではないでしょうか。
ガソリンを危険物と認識し、扱いには細心の注意を払うことが再発防止の第一歩だと考えられます。
現在ガソリンの用途は幅広く、車や、草刈り機、自家発電機、キャンプでの携帯ストーブやコンロなど身近な燃料として使われます。
しかし、実はガソリンの引火点(火を近づけた際に燃え始める温度)はマイナス40度以下で、氷点下でも気化するという性質をもつ危険物なのです。
良く使っているから大丈夫、今まで危険を感じたことはない、という安易な意識が大きな被害を起こす引き金になっているのではないでしょうか。
総務省消防庁によると「目に見える火種がなくても静電気に引火することがある」と指摘しています。
もしかしたら、気が緩んでいたり、忙しくて注意を怠った誰かが、起こしうる事故と考えられます。かといって今はまだガソリンなくして私たちの生活を成り立たせることは難しいのが現実です。
ではどの様にしてガソリンを扱っていけばよいでしょう。
再発防止のためにすべき事|ガソリンの扱いとイベント時での対策
京都の福知山市花火大会露店爆発事故をうけ、消防庁ではガソリンに対する危険度を再確認するためガソリン携行缶の温度上昇実験を何度も行いました。
その結果ガソリン携行缶を安全に扱うため、以下の留意事項が全国の消防機関に通知されました。
① ガソリンの使用についての注意事項
- ガソリン携行缶は、直接日光のあたる場所や高温の場所に置かない。
暑い夏の時期以外にも、太陽が直接当たる場所はガソリンが高温になる可能性があります。
また携行缶の蓋が緩いと蒸気が出るため、使用後は確実に締めることが重要。
- ガソリン携行缶を取り扱う場合は周囲の安全確認とエンジン停止を確認する。
周りに火の気がないか、また万が一事故が起きた場合も、被害が起こらないような場所で取り扱うことが必要です。
- ガソリン携行缶の蓋を開ける前に、エア抜きをおこなうこと。
ガソリン携行缶を開けた際、外気の高気温により、ガソリンの蒸気が噴き出す可能性があるので、少しずつエア抜きをするようにしましょう。
ただし明らかにガソリン携行缶が暖められている場合は、エア抜きは厳禁。
すぐ人や火気がない場所に移動し、ガソリン温度が常温になる6時間は置いてからエア抜きをする必要があります。
② イベントを行う際の注意事項
- 多くの観客が集まり、火災危険の高い花火大会や祭りなどのイベントは、火器の取り扱い、消火準備、店舗の配置、その他防火に必要な事項について指導を行う事。
- 火災危険の高いイベントは、事前に開催に関係する警察河川管理者イベント受託者・露店出店団体と情報共有する事。
- 火災危険の高いイベントは、危険物に観客が近づかないよう注意喚起する事。
事故後、このように消防機関に通知された、ガソリンの扱いやイベントの事故防止の内容。
では、我々はどこまでこの内容を知っているのでしょう。
先ほども説明しましたが、ガソリンは身近な存在です。
花火大会などの、大きなイベント主催者でなくとも、上記通知のように身近な燃料の取扱いに気を付けていかなければなりません。
忘れてはいけない被害者|実行委員会と被害者の示談
露店爆発事故で、花火大会実行委は、委員会が加入する1人当たり上限5千万円の保険で補償をしました。
しかし実際は、長期に渡る通院・手術により、補償金額では補えない方もいました。
そこで京都府福知山市は、イベント事故に備え加入していた「全国市長会市民総合賠償補償保険」(1事故の上限10億円、1人の上限1億円)の損害保険を適用、5千万円では補償金額が不足している被害者へ、上限1億円まで補償額を引き上げることを決めました。
そして事件が起きた2013年より約5年後の2018年3月、全被害者との示談が成立。
しかし、示談したといっても、被害者の負った爆発の記憶は決してなくなることはないでしょう。
忘れてはいけない被害者|その後の被害者の思い
被害者と一言に言っても死亡者と負傷者だと、負傷者は生きている人、と少し楽観的に考えてしまう方もいるのではないでしょうか。
実はこの事故で負傷を負った方々の中には、全身やけどを負い、幾度もつらい手術を繰り返している方も沢山います。
身体的な痛手は勿論ですが、辛い治療生活で負う精神的な痛手も計り知れないものであるはずです。
特に皮膚を火傷すると、元に戻るのが難しく、一生その傷痕を身体に背負って生きていく可能性が高いのが事実です。
傷を見るたびに事件を思い出すかもしれません。
まだ幼くして被害を受けた方のご両親は、この先この傷が元で偏見や差別を受けるのではないかと、非常に心配されているとのことです。
また傷を負った方の中には、常にサポートなどして傷を隠して生活されている方もいます。
たった一人の人間が過失により起こした、あまりにも大きな事故。
私たちは、この被害者の方々の気持ちと事件を忘れずに、2度と事故が起きないようにして行動していくべきでしょう。
まとめ
いかがだったでしょう。
これから花火大会など、ますます野外でのイベントが盛り上がる時期。
しかし同じ悲劇を起こさないために、この京都府福知山市花火大会露店爆発事故を風化せず、一人一人の意識と、身近にある危険物への正しい扱い方を今一度確認してみましょう。